「1番乗り場に大館行きが入りました。大館行きです」
鹿角花輪駅前で親しまれてきたバスの発着アナウンスが、30日で役目を終えました。窓口販売の無人化に伴うもので、地域に元気をもたらしていた声の終了に対し町では、感謝や惜別の思いが聞かれています。
慌ただしい朝も、疲れ果てた帰り道も、その声は響いていました。鹿角花輪駅前のバス停の発着を告げるアナウンスです。
運営してきた「秋北バス」の事業管理部によりますと、アナウンスは相当古くから各地のターミナルで行われてきたそうで、かつてバスの本数が多く、入線が立て込んだ際のためや、道路状況による遅延を伝えることを目的に始まったそうです。
鹿角花輪駅前では乗車券の販売員が兼務し、数人のローテーションで担ってきました。およそ10年前、発券所と待合室を建て替えた時も存続しましたが、今回、終了が決まりました。理由は、社会問題になっている人手不足です。
ここで最も長く務めてきた鈴木和枝さん(63)は、入社直後にマイクを渡されました。「いきなりできないです」と不安を訴えたそうですが、「慣れるから」と励まされてのスタートでした。
始めたころは、はっきりと、落ち着いて話すことだけ意識していましたが、次第に気遣いが自然と口に出るようになりました。高齢者や旅行者がいる時は到着を早めに伝え、長く待っていた人たちには、入線を告げる前に、「お待たせしました」と一言添えました。
3月には、旅立つ若者の見送りで、バスが走り去るまで手を振って涙する親たちを見てきました。帰省シーズンには、孫を迎えに来た祖父母の満面の笑みがありました。
アナウンス業務の終了への思いを鈴木さんに問うと、「乗り遅れる人が出ないか心配しています。最近はスマホを見ていて、アナウンスを聞いて急いで出ていく若者もいるので」と、寂しさよりも前に、気遣いが先に口に出ました。
そして、「皆さんにたまにはバスに乗ってほしい。車と違った景色を、ゆっくり楽しんでもらいたいです」と話しています。
アナウンスの終了を知った町の人たちからは、「人の声があること自体がにぎわいだったので、寂しくなる」「元気をもらっていたので、ありがとうという思いです」との声が上がっています。
1日からは自動発券機が役割を引き継ぎますが、時間に追われる人たちを応援し、この地に降り立った人たちを優しく迎えていた声が、地域の人たちの心に残っています。

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