【リポート】異例の縮小開催、根底に英断 花輪ばやし2日め

【リポート】異例の縮小開催、根底に英断 花輪ばやし2日め

 鹿角市の伝統芸能「花輪祭の屋台行事(花輪ばやし)」は2日めの20日、災害級の大雨の予報を受け、異例の縮小開催の対応がとられました。そこには英断がありました。

 鹿角市内はこの日の日中、大雨と洪水の警報や土砂災害警戒情報が出され、市が一部の地域に避難指示を出すなどしていました。

 祭りはこの日、観光客向けの「駅前行事」と、神事の「赤鳥居詰め」などが予定されていて、主催する「祭典委員会」と運行を統括する「若者頭協議会」が臨時の会議で協議した結果、屋台の運行はすべて中止し、神事を参列のみで行うことを決めました。

 赤鳥居詰めは本来、祭りに参加する10の町内が祭礼ばやしを屋台で演奏しながら、神社の参道に通じる鳥居がある町内へ赴きますが、この日は町内や若者の代表者たちが歩いて訪れました。

 参列者たちが「赤鳥居」のもとに整列すると、幸(さきわい)稲荷神社の神に向かい、遥拝しました。

 そして、花輪ばやし独特の手締め「さんさ」をして、祭りを厳粛に締めました。

 2日めの屋台運行が行われないとあって残念がる声も聞かれ、会場には、「太鼓をたたけなかった代わりに見に来た」という小学生や、「行事の形は変わったが、遠方から来た友人に地元の祭りを見せたかった」と話す男性なども見学に訪れました。

 屋台を伴わずに最後の神事をするのは、少なくとも祭典委員会の前身の組織が昭和50年に設立して以降初めてですが、そこには若者頭協議会のメンバーたちの苦渋と勇気を伴う決断がありました。

 とはいえ、中枢にいて祭りを成功に導く晴れの舞台を逃す選択です。石木田章吾会長(40)は、「コロナが明けて通常開催を始める年から4年間、自分たちがつくってきた運行の形を収められなかったのは、正直には心残りです」と吐露します。

 しかし若者協議会は、「安全こそ第一を掲げ、祭りを担っている」とし、10人の総意と信念で、先輩たちである祭典委員会に行事の縮小を提案し、受け入れられました。

 石木田会長はさんさの前の口上で、「来年は10町の屋台とともにこの場にたどり着くことを願う」と思いを込めました。

 終了後の取材でも今後の祭りについて話し、「このお祭りが好きで支えてくれている若者たちや、お祭りのために帰省してくれる若者がいる。若者のための祭りを続けていってほしい」と期待しています。

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