およそ2年間続いた、「カラオケボックスがない街」という残念な称号もささやかれていた鹿角市花輪で、「カラオケ難民」の救済に地元の男性が立ち上がりました。中高生などの笑顔にふれ、「やって良かった」と自らも笑みを浮かべています。
鹿角市八幡平大里の戸舘和広さん、40歳です。指導をしている小学生の野球チームで、ある保護者からこんな話を聞き、驚きました。「子どもたちを大館のカラオケに送ってくる」
隣の市のカラオケボックスに、中高生たちが保護者の送迎や列車で行っているという実態です。そのあと立て続けに、ほかの保護者たちからも同じ話を聞きました。
もともと、地元の人、子どもたちのためになることをいつかしたいと思っていました。カラオケボックスの開業を決意し、家族に何度もお願いしました。
幼児と小学生の子育て中。安定した会社員を辞めて独立するリスク。周囲から何度も断念するよう勧められても気もちが折れなかったのは、やはり地元の子どもたちへの思いです。「遠くに行かなくても遊べるようにしてあげたい。親たちだって、安心する」
家族の説得を果たし、退社をして、そこからは急いで事を進めました。以前カラオケボックスだった空き店舗を借り、改装をして、設備を入れ、従業員を雇いました。
急いだのは、子どもたちの夏休みに開業を間に合わせたいという一念です。今月5日にいよいよオープンすると、連日、満室が続く人気ぶりです。
日中は中高生。夜は二次会以降の大人たち。そして、「ありがとう」「待っていたよ」と感謝の言葉をもらいます。店の名前「ハッピー」には、「幸せを届けたい」との願いを込めましたが、すでに体現できているようです。
「歌い終えて部屋を出てくる子どもたちが、にこにこしているし、楽しかったねと声を弾ませているのがうれしい。かなりのお客さんたちが利用時間を延長しているのは、待ってくれていた表れなのかなあ」
自身も高校生の時からのカラオケ好きです。「部活が終わって、疲れていても、みんなでカラオケに行って、歌って、笑っていた。子どもたちのそんな姿をもっともっと見たい」。